5月16~18日に日本造園学会100周年記念大会が東京大学構内で開催され、そのうちの二日間は企画展示に出展させていただきました。学会の存在は知っていたものの、個人的にも今回が初参加でしたのでどんな反応をいただけるのか全く分からなかったのですが、ランドスケープ業界の方にもMOLTONを知ってもらいたいな、あわよくばつながりを築きたいなと思い臨みました。動物園の展示計画や全体計画では、ランドスケープデザインの知識や技術を用いて取り組むことが一般的となっています。しかし大会に参加して改めて感じたのは、ランドスケープデザインというのは植栽や地形、水資源などで美しい景観を作ることだけではなく、場所そのものの役割、利用する人・生き物への機能性、周囲環境とのかかわりや持続可能性など、複雑に絡み合う「時」、「モノ」、「コト」の変化に柔軟に対応する「場」を作る手段であるということでした。残念ながら今回の大会で動物園に関連した発表はなく、MOLTONもちょっと浮いた存在になっていましたが、関心を寄せてくれた方々とお話をしていくと、動物園や水族館のランドスケープアプローチは公園やまちづくりなどと共通することも認識できました。ランドスケープデザインは人のために建築物と自然環境の調和を重視しながら屋外環境を作り出す技術ですが、そこに集まってくる野生動物や鳥、昆虫、微生物も相手にすることになります。今回面白かったのは、鳥獣害対策の一つとしてランドスケープの観点からアプローチ方法を検討するフォーラムの中で、野生動物の研究者も発表されていたことです。フォーラムでは、野生動物の行動・生態を知り、被害防除策をまちづくりや道路計画など自治体の上位計画に盛り込むことが提言されていましたが、議論が進む中で、実際に取り組む部署の専門性が高く孤立しやすかったり、予算やマンパワーの不足という現実が浮き彫りとなりました。人材育成については、地域住民が身近な野生動物への関心を高め、動物を過大・過少評価せず正しく恐れる方法を身に着けることが必須ですが、それはまさに動物園・水族館が得意とする環境教育や保全教育の出番だなと強く感じました。これから、人間と野生生物が共存できる未来を考える場として、様々な業界や立場の方に動物園・水族館がどんどん活用されるよう、MOLTONとしてもお手伝いができればと思っています。当日の配布資料をご覧になりたい方はこちら